あなたは、パワハラを受けたことはありますか?
パワハラは被害者の精神を消耗させ、疲労を蓄積させて体を壊していき、心身ともに病ませていきます。
一口に「パワハラ」と言ってもその定義が曖昧だったり、よくわからなかったりしてピンとこない人も多いのではないでしょうか。
今回はそんなパワハラについて、過去の事例なども挙げながら詳しく解説していきたいと思います。
ぜひ、最後までお付き合いください。
- パワハラの加害者にならないために気を付けることが大切
- 過去のパワハラ裁判の概要から、パワハラが起きる原因がわかる
- パワハラへの対処として「退職」も検討しよう
- 場合によっては退職代行を利用するのも手
パワハラには6つの種類がある
- 暴力、傷害(身体的な攻撃)
- 脅迫、名誉毀損、侮辱、侮蔑発言(精神的な攻撃)
- 隔離・仲間外れにする・無視をする(人間関係からの切り離し)
- 業務上明らかに不審なことや遂行不可能なことを強制、仕事の妨害(過大な要求)
- 能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる・仕事を与えない(過小な要求)
- 私的なことに過度に立ち入る(個の侵害)
職場におけるパワハラについて、裁判所や個別労働関係紛争処理事案に基づいて、以上の例を典型的なパワハラの例としています。
パワハラの種類①肉体的な暴力
あまりにもパワハラが酷い場合は、退職や転職を考えましょう。
特に暴力を振るわれているなど身体的に危害を加えられている場合、その職場に居続けること自体が危険です。
転職活動は退職してからでもできます。失業手当を受け取りながら転職活動をすることも視野に入れましょう。
あまりにもブラックな会社である場合、無理に引き止められるだけでなく脅されたりすることもあります。
- 然るべき機関(弁護事務所など)に相談する
- 休職、転職、退職を視野にいれる
人手不足なのを理由に、代わりの人が見つかるまで退職させてもらえないこともあります。
退職をする際には引き継ぎも必要ですが、強制ではないためあなたにそこまでの余力がないのなら、引き継ぎを完了していなくても退職することができます。
パワハラの種類②精神的な暴力
パワハラを受けた被害者が自殺してしまった例もあります。また、パワハラの被害者だけでなく業務そのものの生産性を著しく下げます。
すぐ辞めるという判断ができる場合ばかりではないでしょう。パワハラを毎日受けていると、精神が疲弊してまともな思考ができなくなっていきます。
しかしそんな時こそ、きちんと記録をとっておくことが大切です。
録音をすることができるのならそれでもいいですし、難しいようなら言われた内容を日付や時間・場所などを明確に記録しておきましょう。
何かあった時に記録を残しておかないと、第三者が申告内容を見た時に事実を把握できません。
自分と相手、関係ない人を巻き込まないためにも、誰かに被害を訴える時は「誰に、いつ、どこで何をされたか」がわかるようにしておきましょう。
そこを有耶無耶にしてしまうと、相手に良いように言いくるめられることもあります。
また相手からの暴力行為で怪我をした場合は、怪我の箇所や内容の記録・医療機関の診断書や診療明細書などをコピーしておきましょう。
パワハラが原因でストレスでメンタルを崩して通院した場合も、これらの記録を残しておきましょう。
パワハラの種類③プライベートの部分に入る
「彼女いるの?」「結婚はしないの?」「子供は?」「どこに住んでるの」など本人のプライバシーに関わることをずけずけと聞くことはパワハラ(セクハラ)に当たることがあります。
何気ない世間話でも、本人のプライベートな領域に入っていないか考えてみましょう。
- 有給の使い方や休暇の過ごし方に干渉したり、欠勤・有給の申請を拒否する
- 交際相手についてや友人関係を詮索する
- 特に親密な関係でもないのに、SNSなどを教えるように言う
- 相手の家族の勤務先や、学校名などを詮索する
以上はほんの一例です。何気ない会話のつもりでも、相手にとっては個人情報です。断りづらいことを頼んだり聞いたりしていないか、気をつけましょう。
パワハラの種類④人間関係の妨害
自分の思い通りにならない職員に対して、配転命令・懲罰的な隔離などを行い、職場から被害者を孤立させることを言います。
- 仕事や業務から外す
- 長期に渡って別の部屋(追い出し部屋)や場所(窓際など)
- 研修と称して自宅に移したりさせる
- 出世・昇進の妨害
これらは、「被害者を退職に追い込む行為」として労働裁判では違法行為として認められます。
パワハラの種類⑤過大要求
上の立場の職員が下の者に対して、長期に渡って肉体的、精神的な苦痛を伴わせたり、仕事に関係のない業務をさせることです。
- 被害者をターゲットにし、嫌がらせで業務を増やす
- 対象の人物にあっていないノルマや罰を課す
- 飲酒ができない(妊婦・未成年)、または弱いのに被害者に飲酒を強要する
パワハラの種類⑥過小要求
管理職の部下を退職に追いやるために、誰にでもできるような雑用や単純作業などをやらせることです。
- 管理職に職場の掃除やお茶出しをさせる
- 管理職にコピーやシュレッダーがけばかりなど、雑用ばかりさせる
- 管理職なのに重要なプロジェクトや会議に参加させない
パワハラ加害者のその後の末路
パワハラの加害者はどこに行っても「パワハラ(っぽいこと)をしてしまう」ことが多いでしょう。
パワハラをしている本人が自覚できれば良いですが、なかなか難しいでしょう。
したがって、最終的に孤独になってしまいます。
- 感情的になったり、人格否定をするような叱責はしない
- 相手のプライベートに立ち入りしすぎない
- 周りに人が大勢いるところで叱責しない
- 自分が間違っていることもあるということを頭に置いておく
- 不機嫌な感情を露わにしたり、人や物に当たったりしない
孤独にならないために、以上のようなことに気を付けましょう。
加害者のその後①:誰にも見送られず退職
パワハラが発覚すると、加害者には誰も近づかなくなります。
パワハラの処罰として誰1人として味方がいなくなってしまい、昇給もなくひとりぼっちで退職することになります。
こうならないためには、これまで自覚がなかった人も「もしかして自分もパワハラをしていたかも?」と自分自身を見直してみると新たな気づきがあります。
普段からパワハラっぽい言動をしてしまったり、「そういった気質を持っているかもしれない」と感じる人は、客観的に見た時に自分の言動がパワハラに当てはまらないか、見直してみましょう。
加害者のその後②:社会からフェードアウトした上司
あるパワハラ上司の例です。部下の手柄を自分のものにして、チームの失敗は部下のせいにし、自分に甘く人に厳しい人間でした。
しかしそのパワハラ上司から見て、上の立場の人間には媚を売っていたようです。そのストレスを部下たちにぶつけていたようです。
したがって、結果が伴わないのです。部下たちのモチベーションは下がっていきました。
そして更にパワハラが悪化していきました。そして会話も密にとれなくなっていき、会社の雰囲気も悪くなり、生産性も悪くなっていきました。
そうなると部長や役員も黙っていません。そのパワハラ上司を異動させました。
しかし異動した先でもそのパワハラ上司は同じことを繰り返し、最終的に出向という形になり、どんどん自信を無くしていったそうです。
最終的に、社会生活からフェードアウトしていったそうです。
パワハラをする人間は、こちらが何かしなくても勝手に自滅していくパターンも多いです。下手に何か動くのが躊躇われる場合、放っておくのも手です。
パワハラに関する裁判事例
日本におけるパワハラに関する裁判事例はいくつかあります。パワハラの背景や加害者と被害者の関係も加味しつつ、2つの例を見ていきましょう。
事例①:教員に対して仕事をさせない等の対応
過去に高等学校の教諭に対して「授業や担任等の業務から外して、職員室内での隔離・別の部屋への隔離・5年以上の自宅研修の命令をした」として、600万円の損害賠償が認められた事案があります。
被害者と加害者の関係
この件でパワハラ被害を訴えたのは、高等学校の女性教諭でした。学校側は女性教諭が職員室で他の教諭同士の会話をメモしたり、居眠りをしたり、他の教員との間で揉め事を起こしたりしていました。
そんなこともあって、学校側は女性教諭の席を他の職員から離して、職員室の出入り口近くに移動させました。
しかし一方で、学校側の女性教諭に対する対応も問題視されました。
- 女性教諭が中心的となる労働組合があったのだが、学校側がその女性教諭に「外の集会や研究会に出たりしてはならない」と言っていた
- 女性教諭の両親に、「労働組合を止めるように、ご両親の方から女性教諭に言ってほしい」と学校側が電話した
- 学校側は、女性教諭が不当労働行為救済申立ての手続きをした翌日、女性教諭が提出した欠勤届の受領を拒否した
以上のような学校側の行為からして、「労働組合の存在をよく思わなかった学校側が、女性教諭・または他の教員に対して行った嫌がらせ・見せしめである」と判断されました。
概要と裁判の結果
その後学校側は、これらの事件に結論がでる見込みがないとして、女性教諭に自宅研修を命じました。
しかし結論がでないことは女性教諭の出勤を禁止する理由になりません。
自発的に退職しない女性教諭に追い打ちをかけるようなこれらの行為は、学校側から排除することを目的とした行為であり、不当労働行為であり違法と判断されました。
これら違法行為により学校側は女性教諭に精神的苦痛を与えたことして、高等学校を経営する学校法人は600万円(地裁では400万円)の損害賠償義務を負いました。
事例②:暴行・恐喝を交えたパワハラで高額な損害賠償
以下は、平成17年に音更町農業協同組合で起きたパワハラの事案の例です。
長時間労働で疲弊した職員を厳しく叱責をしたところ、その職員が自殺してしまいました。
この事案では逸失利益として7200万円、死亡慰謝料として3000万円、その他の損害を含め合計1億398万円あまりの損害賠償を認めています。
被害者と加害者の関係
被害者が所属していた課の職員らが体調不良や怪我などで入院してしまい、それから被害者の業務負担が大きくなりました。
職員の1人はその後退院して職場に復帰しましたが、以前のような仕事ぶりは困難であったことから、被害者は残業や休日出勤をせざるをえない状況でした。
- 被害者は次第に、体調不良や食欲不振、不眠を訴えるようになった
- 被害者は、脳神経外科を受診したが特に異常は認められなかった
- 被害者は会社に、異動や職員の増員を希望する内容を書いた自己申告書を提出した
その後被害者は、係長に昇格して業務が更に増えました。その頃から、早朝出勤をするようになりました。
平成17年5月12日の午前中、出荷物のおがくずの中にバックミラーが壊れて落ちてしまい、バックミラーのガラスが混入してしまいました。
翌日被害者は早朝出勤し、課長らとガラス混入の疑いがある30個以上のケースの確認をしました。
しかし、ガラス片全てを回収することはできませんでした。以下は、被害者が自殺する直前の出来事です。
- その翌日被害者は、「仕事がたくさん溜まっている」と課長に訴えた
- 被害者はトラブルが起きた日の18時頃にその報告を受け、2時間後に課長に報告たが、「報告が遅い」と叱られた
- 被害者が抱えている仕事のうちの多くが、被害者の仕事ではなかった
- 課長は被害者に、それぞれの担当へきちんと仕事を振り分けるよう、厳しい口調で3時間にわたって言った
- 課長は被害者が退勤する際にも、「こんなこともできない部下はいらない」と厳しい口調で言った
その翌日、被害者は早朝5時10分頃に出勤しました。しかしその1時間後遺書を残して、首を吊って自殺してしまいました。
概要と裁判の結果
平成18年12月26日、帯広労働基準監督署長は、業務上災害であると認定をしました。
被害者の遺族は、被害者の勤務先に対し、
「被告における過重な業務負担により、夫または父親を精神病に罹患させ、自殺に至らしめた。したがって、被告には安全配慮義務違反がある」
として被告に対し、逸失利益・慰謝料等を合わせて、各自につき7029万1242円の損害賠償を請求しました。
裁判所の判断
被害者が亡くなったことへの損害にとして、約1億円の支払いを命じました。
パワハラ加害者に関するまとめ
今回はパワハラについて解説していきました。基本的には、自分で退職の意思を伝えることができるのが一番後腐れがなく、良い方法だと思います。
わざわざ言うまでもないですが、退職代行を利用するよりも一番良くないのはバックれです。本人の意思がわからず、事故にでもあったのか、何があったのか全く検討もつかないからです。
ありとあらゆるトラブルを生むので、「バックれるよりは退職代行を使う方がまし」
「バックれるよりは退職代行を使う方がまし」ということを頭の片隅に置いておきましょう。
退職せずに済むならその方が良いですし、あらゆる手段を試してみてから退職を決めても良いでしょう。
とにかく無理をせず、自分に合った対応でパワハラに対処(退職代行もここで言う「対処」です)してみてください。自力で無理な場合は、第三者や然るべき機関を頼りましょう。