ハラスメントの判例や種類を徹底解説。あなたはどれだけ知ってますか?

近年、増加傾向にある職場内のハラスメント。

今では、そのハラスメントの種類も多く存在しているのをご存じでしょうか?

ハラスメントの種類は、ハラスメントが注目されるようになってから年々増え続け、現在では50種類以上も存在してます。

ハラスメントの中には、パワハラやセクハラのように法制化しているものが少ない状況です。

この記事では特に職場で問題になりやすいハラスメントを挙げてご紹介。

それではハラスメントの種類、判例を事例をもとに徹底解説していきます。

この記事で分かること

  1. ハラスメントとは?
  2. 代表的なハラスメント5つ
  3. ハラスメントに関する判例4つ

ぜひとも、この記事を参考に職場のハラスメント対応にお役立てください。

それでは、解説していきます。

ハラスメントとは?詳細情報を解説

ハラスメントとは?詳細情報を解説

相手に不愉快な思いをさせる嫌がらせ行為のことを言います。

具体的には、ある言動により相手を不快にさせる、または脅威に感じさせることが「ハラスメント」に該当します。

ポイントは、加害者側に悪気がない場合でも、被害者側が不快に感じてしまえば「ハラスメント」として成立するということ。

一言でハラスメントといっても多くの種類が存在し、その中でも代表的な職場内ハラスメントの「パワハラ」「セクハラ」「マタハラ」「スメハラ」「パタハラ」が現代社会において問題になってます。

次に、これらの代表的なハラスメントについて解説していきます。

代表的なハラスメントとして考えられるもの

代表的なハラスメントとして考えられるもの

ハラスメント①:パワハラ

職場において自分の権力を利用し相手に精神的・心身的苦痛を与える行為のことをいいます。

以下の5つに該当するとパワハラとして認定されます。

  1. 上司または部下が同じ職場で働いている
  2. 職場での権力、優位性を利用している
  3. 業務に関係のない不要なことを指示している
  4. 個人の能力範囲を超えた指示をしている
  5. 職場環境を阻害している

最近では、部下から上司に対してのパワハラも問題になってます。

ハラスメントを意識しすぎて控えめな上司に対して、精神的・身体的な苦痛を与える部下も増加傾向にあるようです。

このような職場では上司と部下の信頼関係を早急に構築することが重要になります。

ハラスメント②:セクハラ

相手が嫌がる性的言動により、働く環境が妨げられることを言います。

具体的には以下の行為5つが「性的言動」に該当します。

  1. 性的な事実関係を質問すること
  2. 性的な内容の情報を意図的に周囲へ広めること
  3. 性的な関係を強要すること
  4. 必要以外に体を触ること
  5. ワイセツな画像を掲示、または拡散すること

セクハラは女性が被害者のイメージですが、逆に男性が被害者になるパターンも近年では耳にするようになってきました。

セクハラがここまで話題に挙げられても一向に減少しないのは、加害者がセクハラをしているとう意識がないことが大きな理由となってます。

自分ではセクハラをしていないつもりでも、相手が不快に感じてしまえばハラスメントになるので注意する必要があります。

男性も女性も一定の距離感を保ちながら接することを心がけましょう。

ハラスメント③:マタハラ

働く女性が妊娠・出産・育児をきっかけに職場内で精神的な嫌がらせを受けることをいいます。

具体的いうと、妊娠・出産・子育てを理由に解雇や自主退職の強要をせまられて不当な扱いを受けることが挙げられます。

妊娠・出産・子育ては女性特有の問題でもあり、いままで通りの業務が困難になるのが一般的。

このような、業務が困難になることについて法律は保護規定を設けています。

例えば、妊娠・出産・育児休業を取得したことに対して、解雇・雇い止め・降格などの不当な取り扱いをされた場合、その行為は無効になるということ。

女性特有の問題だからこそ1人で悩みを抱え込んでしまう傾向があるので、従業員全員がマタハラ予防の意識付けにつながるよう指導していく必要があります。

ハラスメント④:スメハラ

体臭などで周囲の人に不快感を与えてしまうことをいいます。

体臭による不快感は職場の人間関係に影響を及ぼす場合がありますが、スメハラの特徴としてその原因を悪意で生じさせてるわけではないというところ。

体臭は個人差があるため、他人が指摘してしまうと本人を傷つけてしまったり人権侵害もしくはハラスメントになる可能性があります。

問題なのは、自分が出している臭いに気付きにくい傾向にあるため、自分の臭いが周囲の人を不快にさせていることに気付いていない場合があるということ。

このような背景があることで、スメルハラスメントは解決方法が非常に難しいといわれてます。

ハラスメント⑤:パタハラ

育児休暇制度を利用しようとする男性社員が職場から受ける嫌がらせのことをいいます。

あまり聞きなれないハラスメントですが、「マタハラ=女性」「パタハラ=男性」このようなイメージです。

具体的に、どのような条件を満たせばパタハラになるのか?

パタハラに該当する条件5つ

  1. 会社側が育休取得を認めない
  2. 育休取得を諦めさせる
  3. 「育児は女性がするものだ」などの発言をする
  4. 育休明けの男性社員に対し降格・減給させる
  5. 退職または解雇をうながす発言をする

パタハラを防止するためには、育休を取得しやすい環境作りが重要になります。

例えば、「業務量を軽減し男性社員の負担を軽減する」「上司自らが積極的に育休を取得する」などが挙げられます。

ハラスメントに関する判例をまとめました

ハラスメントに関する判例をまとめました

ハラスメントの一例をご紹介してきましたが、ここからは実際に起きたハラスメントに関する判例を4つ挙げて解説していきます。

「働き方改革」「ハラスメント防止法」の義務化により、働く側としては働きやすい環境が作られていく一方で、経営側からすると指示系統に十分な配慮が必要になるという状況になりつつあります。

この意見の相違を埋めるためにも、お互いの意見を尊重しながら働き、運営していくことが重要視されてます。

それでは、意見が食い違って起きてしまったハラスメントに関する判例を解説していきますね。

判例①:コンビニ店員に対するセクハラ

内容は、市の男性職員がコンビニでお釣りを受け取る際に女性店員の手を触れたり、ワイセツな言動をしていたという事例。

男性職員は停職6ヶ月の懲戒処分を受けましたが、女性店員側が「処分が重すぎるのではないか?」と処分を取り下げて欲しいという意思を提示しました。

逆に市の考えは、セクハラという行為は「軽視することができない。」と男性職員の処分を求めている。

この事案がどうなったかというと、女性店員へのセクハラ行為を理由とする停職6ヶ月の懲戒処分が下されました。

被害者側は訴えたものの「そこまで重い処分は求めていない。」加害者側は「重い処分を科すべきだ。」このようなケースは珍しいことではありません。

ではなぜ、被害者側は訴えの取り消しを求めたのに処分が適法されたのでしょうか?

判決のポイント

最高裁としては、コンビニの店長や女性店員が処分を求めていなくも、営業している「店舗への悪影響などを不安視したこと。」と解釈しています。

具体的な判決のポイント5つは以下になります。

  1. 今回の事例が新聞等で報道された
  2. 市民からの苦情が多く、問い合わせが殺到した
  3. 市の記者会見が行われた
  4. 市の公務に対する住民の信頼が損なわれた
  5. 社会に与えた影響が大きい

最高裁の判断は、被害者側が処分を求めていないとした背景には、加害者を許したわけではなく、他の理由があるのではないかという見解。

被害者側は、処分を求めない具体的な理由を提示する必要性があります。

判例②:言葉の暴力がパワハラと判断

内容は、コンビニの女性従業員が店長から言葉のハラスメントを受けて慰謝料の支払いを要求した事例です。

店長は、女性従業員から相談を受けていて勤務時間内に話を聞こうとしていたが、女性従業員が退勤時間を過ぎたため退勤しようとしていた。

店長はそれに気づき、退勤する女性従業員を引き止めようとして口論になる。

ここで店長が「もう来なくていい」「おまえ、何考えてんだ」「ばばあ」「ふざけるなよ」「もう辞めてください」「もう店には来ないでください」「二度と来ないでください」などの暴言を女性従業員に言ったことがパワハラと判断。

そのあと、女性従業員は出勤しなくなりました。

店長の発言は、精神的苦痛を与えたことから女性従業員に5万円の損害賠償義務を負わされました。

判決のポイント

上司から部下に対しての発言を見ると、あきらかに違法であると評価される。

ですが、この事例に至るまでには以下のような背景がありました。

この女性従業員は、以前から問題行動を起こしていて顧客や職場内でトラブルが頻発していた。

  • 上司や同僚の話をまったく聞き入れない
  • 自分の意見を言いたい放題
  • 顧客に対しての言動が悪い
  • 店舗にクレームが来るときが多々あった

女性従業員にも問題があるとはいえ、暴言は許されることではありません。

どの職場にもいえることですが、問題を起こす従業員に対して注意、指導するときは感情的にならず冷静に対応することが今の時代には求められてます。

判例③:パワハラによって自殺してしまった

内容は、医療関係の営業を担当している部下に対して上司が暴言を吐き、耐えられなくなった部下は自殺してしまったという事例です。

上司は部下の営業成績や仕事のやりかたに対して「目ざわりだから消えてくれ」「存在自体が迷惑だ」「お前は給料泥棒だ」などの言動が日常的にあったそうです。

部下は上司から過剰な心理的負担を受けて自殺に至ったと判断され、労災保険給付の対象となりました。

判決のポイント

  1. 精神障害が業務により発症したと認められる部下が自殺を図った場合、業務起因を認める
  2. 部下の遺書には、上司の言動が原因との旨が書かれていた
  3. 部下は周囲の社員に悩みを相談していた
  4. 上司の言動が要因と認められる
  5. 上司は部下に対し、不信感、嫌悪感があったと認められる
  6. 部下への心理的負担は、精神的障害を発症させた原因と認められる
  7. 業務には関係ない理不尽な発言があったと認められる

今回の事例は、上司が部下に対して「不信感」と「嫌悪感」をもっていたために過剰な言動に発展してしまったという内容です。

上司が部下を指導する際の注意点として、人格否定や存在否定する言動を避けることと、部下への立場、性格などに配慮する必要があります。

判例④:ハラスメントと認められなかった事例

内容は、従業員が会社側から不本意な異動、降格を示達され、さらには諭旨解雇(会社側と従業員側が話し合い、双方が納得した上で解雇を受け入れてもらう)されたと主張。

会社側に対して、雇用契約上の地位確認(社員としての地位の確認を求めて訴えること)と慰謝料の支払いを請求した。

結果は、諭旨解雇、慰謝料請求は認められませんでした。

このケースは、不本意な異動、降格、諭旨解雇がハラスメントに該当すると本人は訴えていますが、結果はハラスメントとして認められず。

そのポイントを次に解説していきます。

判決のポイント

  1. 本人はいままでに、業務命令に従ったこともあり、会社側が解雇という処置を負わせるのは相当してないこと。
  2. 今回の事例では、第三者からみて合理的理由に欠けていること。
  3. 本人が過去に他部署へ配置転換されたとき、知らない間にメーリングリストから除外されていた。
  4. 会社側は本人に対して不愉快な言動をしたことを認めたが、嫌がらせ行為(パワハラ)に該当するという判断はできない

相手が不愉快だと感じても、必ず損害賠償請求が認められるわけではないということです。

<ハラスメントの判例や種類のまとめ

ハラスメントの判例や種類のまとめ

ここまでハラスメントの判例についてご紹介してきました。

ここで解説しましたハラスメントの種類はごく一部で、今後も増えていくと予想されます。

ハラスメントは従業員が精神的苦痛、身体的苦痛を感じてうつ病などの精神疾患につながることもあり、最悪は自殺に追い込んでしまう場合もあります。

また、ハラスメントの責任は加害者だけではなく、会社または会社役員も損害賠償責任を負わなければいけないときもあるでしょう。

ハラスメントを無くしていく上で会社側は、全従業員に対してハラスメント対策の取り組み内容を周知徹底させることがハラスメント撲滅への第一歩となります。

そして、会社に相談窓口を設置すると同時に、ハラスメント防止教育として積極的に講習やセミナーを実施していくことが重要になってきます。

ハラスメントのない社会を築き上げていくために上司、部下ともに思いやりの心をもって接していきましょう。

最後まで読んで頂きありがとうございました。